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Clients’ Voice

誇りを取り戻し、未来を目指す。一生ものの旗印を作っていただきました。

マルカン酢株式会社代表取締役会長/CEO 笹田 隆様、取締役 経営企画室長 芝田 恵様

生まれ変わるためには、言葉が必要でした。

メッセージ開発にご一緒させていただいたのは、デザイン会社のVICOさんのお引き合わせがきっかけでしたね。あらためて、プロジェクトの発端をお聞かせください。

笹田:2019年末、私がマルカン酢の経営を引き継いだのが始まりでした。当社は1649年の徳川時代に創業した老舗のお酢メーカー。伝統も技術もあり、非常にいい商品開発をしています。しかしこの数十年間はどこか受け身で、市場での認知度も高くなく、誇りを失っているようなところがありました。この状況は、なんとしても打破しなければなりません。経営企画室長の芝田さんが主体となり、マルカン酢を生まれ変わらせるための「ReBorn委員会」を発足したのです。

芝田:10名のメンバーとともに足掛け1年以上、ときには合宿も行って話し合いを重ねてきました。私たちマルカン酢はいったい何者なのか。その使命は。ありたい姿、描くべきビジョンはどういうものか。そしてようやく見出した存在意義を、次のように文章化したのです。

発酵の力=酢を基軸とした事業展開を通して、
お客様や関わる皆の「おいしい幸せ」を実現し、
世界で最も愛されるマザービネガーカンパニーを目指す

笹田:この言葉を作ったところで、行き詰まってしまいました。ここに込めた思いを伝えるにはさらに長々と説明する必要がありますし、それをやったところで共感が得られにくい。そこで、以前からお付き合いがあり、いつも商品ラベルデザインなどをお願いしているVICOさんに相談してみたところ、言葉のプロであるフリッジさんをご紹介いただきました。

それは、社員たちの覚悟を決めるプロセス。

神戸本社にお伺いし、工場見学や「ReBorn委員会」の皆様へのヒアリングをして御社への理解を深めたうえで、メッセージ案をご提案しました。

芝田:4方向、計15案という量もさることながら、客観的な視点で当社の個性や強みを見出していただけて、さまざまな気づきや驚きがありました。

笹田:表現の幅も広く、直球ど真ん中の案もあれば遊び心のある案もある。広がりがある言葉に、深みのある言葉。あちらは理知的、こちらはエモーショナル。右脳と左脳、五感のいろいろなところを刺激されました。言葉の表現に困って依頼したのに、良い言葉がありすぎて、今度は選ぶのに困ってしまいましたね。

プレゼン後、「ReBorn委員会」の皆様の投票で選ばれたのが「元祖丸勘の名にかけて。」という案でした。

芝田:当社のルーツを再評価し、誇りを取り戻そうという力強いメッセージです。驚いたことに、ほぼ全員の票が集まりました。1年以上議論を重ね、メンバー間で言葉にならない共通認識ができあがっていたのだと思います。そこへフリッジさんがふさわしい言葉を与えてくださった形です。

笹田:灯台下暗しと言いますが、まさに自分たちでは見えていなかった足元を言葉で照らしていただきました。なるほど言われてみれば、私たちマルカン酢は、徳川時代に広く使われた「丸勘印」の元祖です。もともとはよそのお酢と区別するために作った印でしたが、「良いお酢=丸勘印」と知れ渡った結果、良いお酢の印としていろいろなお酢屋さんに使われるようになりました。その後、明治時代に施行された商標条例によって、この丸勘印の元祖が私たちマルカン酢であることが公に認められ、私たちの商標となったという歴史があります。この「言われてみれば」が、当の本人たちには見つけられなかったのですね。

笹田:ただね、肝心の私の腰が引けてしまった。ここまで言い切ってしまって良いのだろうか? おこがましくはないだろうか? 「元祖丸勘の名に恥じぬお酢づくり」といった具合に、表現を和らげた案をいくつか出していただけるよう、フリッジさんにお願いしたんです。しかしその後も、メンバーが支持したのは「元祖丸勘の名にかけて。」でした。一人一人に確認しましたよ、「本当にこれを背負ってお酢づくりができるの?」「営業に行けるの?」と。誰一人揺るがない。社員がこれだけ強い言葉を掲げる覚悟があったことに驚かされました。あるいは、このメッセージが彼らの魂に火をつけたのか。こうなると、発注書の品名も「メッセージ開発」ではなく「覚悟を決める会」などが正しかったのかもしれません(笑)。

伝統と未来が、魂で共感できる言葉になりました。

その後、伝えたい思いをよりクリアに表現するために、数ヵ月かけてメッセージを磨き上げていきました。

芝田:私たちがどうしても表現したかったのは、「元祖丸勘の名にかけて、これから何をしていくのか」でした。「ReBorn委員会」の素案では「お客様や関わる皆の“おいしい幸せ”を実現し〜」とされていた部分です。ここを説明的な言葉でなく、心や魂で共感できる表現にしたかったのです。

笹田:「おいしい幸せ」とは何なのか、なぜおいしいと幸せなのか。なぜ私たちが「おいしい幸せ」を作りたいのか。読んだ人にどんなイメージを持っていただきたいのか……。ずいぶんと思いや悩みをお話ししましたし、それに応える案もたくさん出していただきました。

「元祖丸勘」「おいしい幸せ」という2つの核を共存させると、メッセージがぼやける恐れもありました。ここの整理も難題でしたね。

笹田:どうしても思いを譲れない私たちと、プロの目線で効果的な伝え方を検証してくださるフリッジさんと。この議論や葛藤のプロセスが重要だったと思います。お互いに「お客さんだから」なんて遠慮は捨てて、真剣勝負をするのがマナー。その先に、ようやく化学反応が起こるわけですから。
そして出来上がったのが、「おいしい笑顔を世界に咲かそう。元祖丸勘の名にかけて。」というものです。マルカン酢の未来と伝統をパッと掴めるメッセージに、分かりやすく整理されたボディコピー。私たちの思いを素晴らしい形にしていただきました。

この言葉を、マルカン酢の魂に変えていきます。

プロジェクト全体を振り返って、私たちの仕事ぶりはいかがでしたか?

笹田:非常に熱心で、まじめに、ていねいに取り組んでいただきました。ここまでやり遂げてくださったことにあらためて感謝いたします。当初はコピーライティングだけをお願いしたつもりが、どんどん悩みを聞いてほしくなり、最終的には私たちマルカン酢の本質を探し求める旅にご一緒いただきました。行きつ戻りつ、長い旅路となってしまいましたが、妥協は一切できなかったんです。「アイデンティティを持てない会社は、いっそ畳んだ方がいい」とさえ思っていますから。ほかのクライアントさんは、こんなふうに存在の悩みまでは持ちかけませんよね。大変だったでしょ(笑)。

むしろ非常に光栄なお仕事でした。

笹田:おかげさまで、一生ものの資産となるメッセージができました。大変満足していますし、社内外からの評判も非常に良いです。

芝田:会社が生まれ変わるプロセスのひとつの集大成を一緒に作っていただいた形です。実は今、このメッセージを人事評価の一項目に使っているんですよ。「“おいしい笑顔を世界に咲かそう。元祖丸勘の名にかけて。”を体現できましたか」って。

笹田:この言葉を自分たちの骨にして、血にして、魂にしていかなければなりませんからね最近は社員も明らかに変わってきました。人が光ってきたというのでしょうか、自分を出して自分の足で立つという姿勢が生まれつつあります。まだ模索している部分も多々ありますが、この旗印ができたことによって、右往左往したり、逆戻りしてしまうことはなくなりました。今後は広報活動にも活用していくつもりですので、その際はまたお世話になります。

芝田:ぜひよろしくお願いいたします。

こちらこそ! どうぞよろしくお願いいたします。

(敬称略)

マルカン酢株式会社 様

1649年創業、伝統技術の継承と高品質な商品の提供を追求する食酢メーカー。1975年には他社に先駆けてアメリカに進出し、ライスビネガーを製造販売するなど、老舗でありながらベンチャー精神をもって挑戦を続けています。